とある恋人たちの日常。

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 恋人に気持ちを込めてプレゼントを贈った。
 ダイヤモンドがはまったプラチナのリング。もちろん彼女の左手の薬指にピッタリのやつを。それがどう言う意味が分からない……はずないと思うんだ。
 
 彼女はびっくりしたまま、呆然として動かない。
 
 え。
 まさか、嫌だったかな。
 
 鼓動が早くなって、その音が耳にダイレクトに響く。
 
 びっくりしているだけだと思うんだけれど、大丈夫だよね?
 
 ばくんばくんと耳に直接聞こえる音ともに不安で視界から色が消えていくみたいだった。そして身体の底から震えが込み上げてくる。
 
 そして、彼女の瞳から綺麗な雫がとめどなく流れ落ちて俺は更に驚いた。
 
「ご、ごめん、そんなに嫌だった!?」
 
 慌ててフェルト生地のジュエリーケースを彼女の手から取ろうと手を伸ばすと、彼女は慌てて俺からジュエリーケースを遠ざける。
 
「嫌じゃないです!」
 
 その声に引き寄せられて彼女を見つめる。
 柔らかな表情じゃなくて、あまり見た事の無い、キリッとした強い眼で俺を見つめていた。
 
「嬉しいです、いちばん欲しかったものです。絶対に返しません!!」
 
 彼女の大きな瞳から更にぽろぽろと涙が溢れ出す。そして俺を正面から抱きしめてくれた。
 
「私、ずっとずっと欲しかったものです」
 
 その言葉を聞いて安堵し、身体中から力が抜けた。
 
「良かったぁ……」
 
 俺も彼女を抱きしめ返した。
 
 
 
おわり
 
 
 
五〇一、モノクロ
 
 
 

9/29/2025, 2:32:09 PM