【失われた響き】
いつもの時間、いつもの場所で耳を澄ます
小高い丘の上、高い木に登って耳を澄ます
遠くから聞こえる美しい歌声
言葉は聞き取れない、ただ美しい旋律が風に運ばれてくる
目を閉じて声の主を想像する
きっと細い喉を震わせ歌っているのだろう
毎日この時間になると聞こえてくる
時計がわりと言ってもいいくらいだ
教会の讃美歌だろうか?
私は毎日聞こえるこの旋律が、
何か意思をもって伝えられているような気がしていた
時に明るく、時に悲しげに、
同じ旋律なのに毎日違って聞こえる
まるで何か話しかけられているようで心が暖かくなる
ある日、いつものように木に登り耳を澄ます
しかし、なにも聞こえない
あれほど時間に正確だったのに
何かあったのだろうかと心配になる
私は決意した、君に会いにいこう
私はすっかり君の虜になっていたのだ
行こう、失われた旋律を求めて
11/29/2025, 2:52:09 PM