たやは

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透明な涙

私の頬を伝う透明な涙。もう泣くのはこれが最後だ。絶対に泣くものか。

高校に入学して半年位した頃、体育祭の練習が始まった。運動音痴の私は、体育祭は嫌いでいつも練習の時から休みがちだった。高校の体育祭では組み立て体操に参加することが決またつたが体も硬い、体力もない、とてもみんなと同じようにできる自信がなかった。練習休もう。そんな気持ちでいた時、隣りの席の男の子から声をかけられた。

「体育苦手そうだよな。」

「え?あ、うん。」

「俺が練習に付き合うからやってみない」

隣りの席の彼は、陸上部の期待の新人で県大会で入賞するほどの実力者だ。そしてイケメン。いつも彼の回りは華やいだ歓声に包まれていた。

彼は言った通りに毎日組み立て体操の練習に付き合ってくれて、運動音痴の私に合わせて体の使い方を教えてくれた。教室での席は隣り、体育祭の練習も一緒、いつも優しく笑顔で話しかけてくれる彼を好きになるのに時間はかからなかった。
体育祭が成功したら告白しよう。私の人生で初めて告白だ。それまでは、今まで通りに接して体育祭の練習も頑張らなければ彼を失望させる訳にはいかない。

体育祭は初めて逃げ出さずに乗り切る事ができた。私でもやればできると少しだけ自信もついた。これも彼のおかげた。

さあ、体育祭が終わった。告白するぞ。
彼はモテる。たぶん、たくさん告白されているはずだ。だから、振られるかもしれない。それでも告白したかった。
体育祭の翌日に人のいない空き教室に彼を呼び出す。緊張するなぁ。ても頑張れ私。

「好きです。付き合って欲しいです。」

彼の顔を見てはっきりと伝える。あんなに自信がなかったのに、何故か彼の目を見て告白したかった。

「あ〜。ごめん。俺、彼女いるんだ。別の学校の人。」

申し訳なさそうに頭を掻きむしる彼。こんな時も彼をかっこいいと思ってしまう。

「そ、そっか。私の方こそごめん。これからも友達でいてね。」

「もちろん。席も隣りだしよろしくな」

私の遅すぎる初恋は終わった。気がつくと涙が溢れ出していた。私は彼のことがそんな好きだったのかと自分のことながら驚いている。でも、告白して良かった。結果は振らたけれど、これからも友達でいられる

「う〜っ。振られちゃた〜」

涙があとからあとから溢れだす。明日から、笑顔で彼に接するためには泣くのはこれが最後だ。

あれからも友達関係を続けている私たちは、高校を卒業した。大学は別々となり会う機会も減った。
大学生活も順調に進み、サークル活動の中で知り合った人に告白された。

「付き合って欲しい。」

「え、あの。私、あなたのこと良く知ら」

話しの途中で突然、誰かに右手を掴まれ、強い力で引っ張られた。驚いて引っ張った相手を見れば彼だった。

「俺の彼女に何か用?」

「え?」

「あ、ごめん。彼氏さんいたんだ。」

サークルの人はそそくさと走っていった。

彼の顔を見あげる。今、確かに俺の彼女って言っていたような。

「ごめ、ごめん。なんか、告白されてると思ったらつい。」

「私のこと好きなの」

「え〜と。好きだ。他の男に取られたくないって思ったら手が出てた。本当にごめん。なぁ。俺たち友達辞めて付き合わないか」

涙が頬を伝う。嬉しさがこみ上げてきて止まらなかった。

「泣くなよ。あの時、お前の涙が透明で綺麗だなって思ってから好きになった。」

どうして、もっと早く言ってくれなかったのか。それでも嬉しい。

1/16/2025, 9:53:57 PM