「手を繋いで」と老人ホームから帰る時に祖母は必ずそう言って両手をだした
ぎゅっと握る、その細く血管の浮き出た働き者だった手は、私より小さいのに力強く温かかった
「また来るね」
そう言って握り返しても、祖母は離さない
何度も確かめるようにぎゅうぎゅう私の手を握り繋いだら
祖母は手を離して寂しそうな目をした
何度も手を振った
もう、その両手はこの世界にはない
でも、私はあの両手の温かかさと力強さを忘れた日はない
言葉よりも強い愛だったから
忘れることなど、逃げることなど、切なくなるなど
出来ないのだ
裏切れない両手の約束なのだ
12/9/2024, 12:14:24 PM