Nonoka

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『不可解なこと』

「映画観に行こうよ」

久しぶりに家に来た幼馴染が唐突にそう言った。

「映画ぁ?」

普段は映画なんて全く観ない幼馴染が映画だなんて、槍でも降るのだろうか。私が誘ってもついて来たことないくせに。

「別にいいけど、急になんで?」

そう聞いてみたものの、

「いいからいいから、行こう!」

はぐらかされてそのまま映画を観に行った。映画はよくあるSFで、結末が容易に予測できるようなものだった。上映中も幼馴染は私の方をチラチラ見ながらニヤニヤしていた。映画に集中しなよ。

映画が終われば、幼馴染は「用事があるから」と足早に帰って行った。

「じゃあね、ありがとう」という言葉を残して。

ー結局のところ、私が幼馴染の真意をその口から聞くことはなかった。

翌朝、幼馴染のお母さんが家を訪ねてきたのだ。黒い服を着て、泣き腫らした目で。

聞けば「おやすみ」と言って部屋に行き、それきり戻って来なかったのだという。

幼馴染が病気だったという訳でもないし、どこか悪いところがあったという話も聞いていない。昨日も元気そうだった。

ただ、幼馴染は昔から勘が鋭く、自分の身に何かが起こることを予期していたのではないか。思い違いじゃなければ、そうだから私と映画に行ったんじゃないの。

昔、幼馴染が言っていた。

「神様はいるんだよ。神様はなんだって教えてくれる。明日の天気も、今日の晩御飯も、何もかも」

私はその時幼馴染の言葉を信じていなかったが、今は少し変わった。

もしかすると幼馴染は本当に神様から知恵を授かって、これから起こることを予期していたのではないかと。それでいて、幼馴染は何事もなかった顔をして私と過ごしていたのだ。

神様、幼馴染と最期に映画に行けたことについては感謝しています。

でも、知恵を授けるくらいならどうしてこんなにも早く幼馴染を連れて行ったのですか。


お題【神様へ】

4/14/2026, 10:59:47 AM