「ススキの穂はキツネのしっぽ♪」
こぎつねたちが楽しそうに歌いながら、ススキ野原にやってきた。
「何して遊ぶ?」
「おにごっこ!」
こぎつねのソウタは誰よりも素速い。誰もソウタに追いつけない。おにごっこしてもソウタはいつまでもつかまらない。
「ススキの穂はウサギのお耳♪」
こうさぎたちも楽しそうに歌いながら、ススキ野原にやってきた。
「何して遊ぶ?」
「かくれんぼ!」
こうさぎのフワリは誰よりも隠れるのが上手。誰もフワリを探し出せない。かくれんぼしてもフワリはいつまでもみつからない。
今日もソウタはひとりで駆ける。ひとりで駆けて風になる。
その時、ソウタはみつけた。一匹のこうさぎを。
「ウサギだ!みつけたらみんなに教えるんだった。でも、みんな僕を追いかけてこないしな…そうだ。ススキの穂を耳につけよう。しっぽは出来るだけ小さくして…。僕はウサギ!」
一方、フワリはひとりで隠れる。ひとりで隠れて風になる。
その時、フワリはみつけた。一匹のこぎつねを。
「キツネだ!みつけたらみんなに教えなくてはいけない。でも、みんな私を探し出せない。そうだ、ススキの穂をお尻につけよう。耳は出来るだけ小さくして…。私はキツネ」
ソウタはフワリに声をかける。
「何しているの?」
フワリはドキドキしながら答える。
「かくれんぼ。でも、誰もみつけてくるないの」
ソウタはフワリが答えてくれたので、自分がウサギに見えるんだと自信をもった。
「あなたは何をしているの?」
フワリもソウタが話かけてくれたので、自分がキツネに見えるのだと自信をもった。
「おにごっこ。でも、誰も捕まえてくれないんだ。一緒に遊ぼうよ」
「何して遊ぶ?」
「風遊び!」
ソウタとフワリは風になる。
風になってススキの野原を駆け回る。
ふたりで遊ぶのが楽しくて、時間を忘れて駆け回る。
「ソウタ〜、どこにいるの?帰るよ〜」
こぎつね達が呼んでいる。
「フワリ〜、どこにいるの?帰るよ〜」
こうさぎ達が呼んでいる。
「じゃあ、またね」
ふたりは声をかけあって、手を振りあって別れる。
「誰と遊んでいたの?」
こぎつね達がソウタにたずねる。
「知らないキツネの子」とソウタ。
「誰と遊んでいたの?」
こうさぎ達がフワリにたずねる。
「知らないウサギの子」とフワリ。
秘密の友達。秘密の遊び。
ソウタもフワリも秘密がちょっと嬉しくて、にこにこしながら帰っていった。
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お題:ススキ
11/11/2024, 8:31:45 AM