二人だけの秘密(オリジナル)
「あなたにだけは教えておくね」
明日には妻になる彼女が、真剣な目をしてそう言った。
彼女は両親とも他界しており、親類縁者とも疎遠。
天涯孤独の身の上だった。
人生ハードモードだろうに、真面目に、健気に、一生懸命に働く姿に好感を持った。
案外古風な彼女は結婚までは決して身体を許してくれず、それもついに明日の入籍で解禁となるわけなのだが。
それに関して、何か私に言っておく事があるのかもしれない。
私は居住まいを正した。
「実は私、身体に大きな欠陥があって」
私は予測していた事もあり、大きく頷いた。
「どんな君でも愛しているよ」
「…ありがとう。でも、たぶんびっくりしちゃうと思うから、先に少し見せておくね」
そう言って、彼女はそっとパジャマをめくった。
その下の、下着のシャツの部分もたくしあげて、お腹が見える。
はずだった。
「は?」
お腹があるはずの場所に、大きな穴が空いていた。
それこそ、生きていられるはずもない、大きな穴が。
骨はどこに?
内臓もどこだ?
彼女はいったい?
私は恐る恐る手を伸ばした。
穴は手品でも夢でもなく本当に穴で、後ろのシャツに手が触れた。
至近距離に、彼女の顔がある。
彼女は恥ずかしそうに、はにかんでいた。
「えへへ、二人だけの秘密、だよ」
約束を破ったら、私の両親みたいになるからね。
その言葉は幻聴だと思いたい。
私はそのまま気を失った。
5/3/2026, 2:36:12 PM