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これが最後だと知っていたら、お前に言えただろうか。
二度と無いと知っていたら、お前を引き留めただろうか。
烟る雨に傘もささず、佇んだ墓の前。
いいやきっと、あの時に戻ったとしても。
例え、何度あの日を繰り返したとしても。
俺は口を噤んで、愛想無く踵を返した。
その方が正しくて、その結果が今目の前にある。
墓前に泣き沈むその背に、差し掛けられる傘がある。
共につかれる膝も、握られる手も、掛けられる声もある。
お前を支える沢山の人がいる。
だからこれが正解で、だから泣く必要はない。
俺が死んだこと位そんなの、気に病む必要なんて何も無い。

‹雨の香り、涙の跡›


ぴりりと張った緊張感
伸ばされた手の辿る意図
無音に閉じる唇が
無言に示す選択肢
染まぬ小指の爪先を
彩る色を決める時
呼び掛ける名前の色を
一つ確かに決める時

‹糸›

6/20/2025, 9:23:24 AM