つぶて

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 パチパチと爆ぜる火花が夏の夜を引っ掻く。手のひらほどの小さな光。君と見るはずだった大きな花火と比べれば、ほんの微かなものだ。夜空に打ち上がる力もなく、か弱い灯りを残してポトリと地に落ちてしまう。
 僕の視線に気づき、君は楽しそうに線香花火を差し出す。勝負勝負と言いながら、その頬にほんの少しのごめんねを滲ませて。君はまだ、夏風邪を引いたことを悪く思っているらしい。
 いいんだよ。僕は心から思う。僕は思いの外、この2人だけの花火大会を気に入ってたりする。君の横顔を一番の特等席から見られるのだ。君の笑顔はどんな花火よりも明るくて、綺麗だった。
 肩を並べて線香花火を見守りながら、僕はその輝きに願う。どうかいつまでも咲いていてほしいと。

6/28/2023, 3:11:28 PM