勇者と呼ばれる少年と対峙した時、なんと複雑な感情を目に浮かべているのだと思った。仲間であろう剣士や魔術師とも異なる、芯の強さを。
勇気--今まさに強者へ挑まんとする姿勢が感じとれる。
自信--おそらくこれまで数々の戦いや冒険から得た経験が表れている。
覚悟--たとえ自身の命が私と共に消えようとも倒してみせるという意思が宿っている。
そして、憎悪。
これはおそらく役立たずの小娘を、奴の目の前で心臓を撃ち抜いたからに違いない。冒険を共にして立ちはだかる壁を乗り越えてきたからか。そんなに心を通わせることができていたとは予想外だった。なんだ、惜しいことをした。もう少し使ってやってもよかったかもしれない。
まぁ、殺めてしまったのは仕方がない。私はもう一度奴の目をしかと見た。複雑な感情を浮かべた瞳は、やはり強者の目をしている。
相手にとって不足なし。
「その強さ、私に証明してみせよ」
奴の目に燃え上がる炎のような光が宿った。
『君の目を見つめると』
4/6/2024, 2:20:05 PM