踊るように舞う白鳥。その一匹は彷徨っているように見える。そして一匹でいることを喜んでいるようにも見える。
僕はそれを海沿いにある道路を車で走りながら窓から眺める。
家族で話している声がすぐそこから聞こえるのに、頭では処理できないから、まるで遠く離れたところから聞こえるみたいな錯覚を覚える。聞きたくない声から僕は背けて、みたいものだけを見る。たとえ邪魔をされようと。
*
「白鳥になってみる」
トンネルからくぐって出てきた車を見下ろしながら、僕はずっと同じところをぐるぐる回る。美しい羽をはばたかせ、空を誘惑する。
そんな行動に意味はない。というか、ひとつひとつの行動に対して考えてやっていない。本能が「こうしろ」と囁いてくるのだ。
*
僕は車にいる僕に戻る。そして白鳥に心のなかでこう叫ぶ。
「あなたは僕で僕はあなた。
だからあなたはきっと《あの家族を殺したい》と思ってるんでしょうね。」
テーマ-【舞うように】
9/8/2024, 1:34:20 AM