「好き」を自覚する瞬間は一体いつなのだろう。頭が良くてスポーツも出来て、皆に優しい。違う、それは好きの"理由"であって、きっかけじゃない。
校舎裏、彼を呼び出したわたしの心臓は早鐘を打ち、無限に汗を流していた。断られたらどうしようと、気持ちがすぐマイナスになる。やっぱり無かった事にしてもらおうか──。
「えっと……大丈夫?」
気が付くと、彼が目の前に来ていた。大きくて固い彼の手がぽんとわたしの頭を包み込んで撫でた。その瞬間、霧が晴れたようにわたしは"その気持ち"を自覚した。
嗚呼、そうだ。頭の中でずっと彼の事を考えて、優しくされたら嬉しくなり、些細な事で言われた礼に、今度はもっと喜んで欲しいと意気込んでしまう。
僅かな「好き」が蓄積して、いつしか気持ちが溢れていく。洪水の如く、積み重なったこの思いを相手へと伝えるのだ。
さあ、勇気を出して──。
「好きです、付き合って下さいっ」
2/5/2023, 10:51:23 AM