かたいなか

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「星空、空模様、空が泣く、あいまいな空……
『空』が付くだけで、これで、9例目なんよ」
ここに天気ネタ・雨ネタが入れば、ほぼ1ヶ月に1〜2回、相手にしている「空」。
なんだよ「きっと数日後には大空の上をサンタさんがソリに乗って来るんだぜ」か?など捻くれて、某所在住物書きが、しくしく未だに痛む腰をさすりながら、スマホをポンポン。
昨日捻挫して、未だに少し尾を引いているのだ。
「……そういや、『痛いの痛いの飛んでいけ』って、どこに飛んでいくんだろな」

ポンポンポン。次回題目配信まで、残りわずか。
物書きは今日も、物語のネタで途方に暮れる。

――――――

最近最近の都内某所、某職場。
保温靴下と、ホッカイロを仕込んだひざ掛けの耐寒装備をした後輩が、先輩からミルク入りのコーヒーを受け取り、ひと息ついている。
可能であれば、2枚合わせのひざ掛けで自作したケープポンチョなども、肩から羽織りたいところ。
しかし悲しいかな、その職場は、この後輩のような体質の従業員に配慮が無かった。
唯一の救いは温かい飲み物程度か。

「ヘイ先輩、オッケー先輩、なんか冷え性と寒暖差アレルギーに効きそうな豆知識かレシピ言って」
「ピロン。あのな。いきなり話題をフられても、申し訳無いがすぐには思いつかない。つらいのか」
「べつにー。何でもないでーす」

ネット情報に依るものの、女性7割、男性4割程度は冷え性の症状を自覚しており、かつ年代では30代がピークであるという。
この後輩も、30こそ到達していないものの、
昨今の気温の乱高下、冬の最低気温によって、
つま先を指先をそして足元そのものを、ひやり、冷たくしている。
後輩には「現在26℃です」と表示する温度計付き置き時計が、嘘をついているように感じられた。

「そこまで明確な話題フリを、何でもないのに出す筈が無いだろう」
「意外と本当に何でもなかったりする。冷えるのなんて、いつものことだし」

冷え性と寒暖差アレルギーねぇ。
先輩は窓の外を、その先に広がっているであろう(けれど、コンクリートジャングルを構成する建造物に遮られて少ししか見えぬ)大空を見る。
冬の朝夕にこの大空が晴れると、放射冷却により、気温が降下しやすい。
今日の天候も文句なしの晴れ。後輩には憎々しい限りであろう。
が、後輩はそれを聞きたいわけではあるまい。

ならば本日12月22日、冬至とセットで語られることが多い、ゆずの効能は?
先輩は窓の外の大空から目を離し、己の通勤バッグを、正確にはその中に忍ばせているゆず茶を見る。
ゆずは体を温める効果があると、信じられている。
実際にそういう効能を持っているのか、実はそれを期待されているだけだったりするのかは、咄嗟には、分からなかったが。

「コーヒー飲み終わったら、」
ぽつり。先輩は己の後輩に、今朝通勤途中に購入してきたばかりの、ゆず皮入りな日本茶を、そのティーバッグのパッケージを見せた。
「これでも、試してみるか?」
後輩は首を傾けて、更に傾けてから、先輩の持っているパッケージをじっと観察した。

「ちょっと前に先輩が飲ませてくれたやつだ」
後輩は言った。
「アレだ。おいしいやつだ。冬至の期間限定品」

12/22/2023, 7:39:01 AM