もし。私に前世があるのだとしたら……。
前世での伴侶とやらに会ってみたい。
ふとそんなことを考えながら、コーヒーを啜る。
五十嵐 奈緒。今年で30代に突入。
彼氏いない歴数年。仕事一筋で生きては来たものの、寂しさは無いがこうして色々と考えることが増えた。
将来の自分はどうなるのだろう、このまま一人なのか、それとも家庭を築いているのか。
気になるようになったのだ。
ある日、テレビのバラエティ番組で、“前世” というワードが引っかかった。
元々、超能力とかお化けといった類のものは信じていない。昔の私なら、前世の自分とやらも興味が無いと言って無視していたと思う。
だが、将来について考えていたからか、ひとつの疑問が浮かんだのだ。
『前世の私は、どんな人生を歩んだのだろう。』と。
とはいえ、思いついたから完璧に信じた訳ではなく、あくまで自分の妄想程度。
真実なんて、誰にも分かりやしない。
もし分かる存在がいるのだとしたら、神様くらいだろう。
でも、もし前世があったとして……。
前世の私はこうして一人だったのだろうか。
それとも、誰かの隣を歩いていたのだろうか。
居たかもしれない、かつて生涯を共にした相手。
もし居たとしたら、どんな人なんだろう。
ドンッ。
『あっ。』
そんな風にまた歩いていると、すれ違った男性に肩をぶつけてしまった。
まさかぶつかると思っておらず、私は体制を崩しその場でしゃがむような形になってしまった。
「大丈夫ですか?」
ぶつかってしまった男性が、手を差し伸べた。
心配そうに覗き込む顔はとても整っていて、私の心を簡単に奪っていった。
これが、未来の旦那となる 結城 新太との出会い。
そして、私の前世……栞と新太の前世……拓が恋人同士であったと知るのは、まだまだ先のお話。
#巡り会えたら
10/4/2023, 6:27:24 AM