ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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『鳥のように』連作詩

「軽さへのあこがれ」

飛ぶ鳥はとても軽いのだということを
わたしはときどき忘れる
飛ぶために鳥が捨て去ったものの重さを
わたしはときどき忘れる

鳥の骨は細く軽く
すきまだらけで脆いということを
150kg超の鳥でさえも脆く
たくさんのものを捨て去っているということを

明け方庭のどこかで鳩が鳴くとき
夕方田んぼの片隅でケリが鳴くとき
わたしは思い出す

わたしは150kgの鳥より重い
どれだけ多くのものを捨て去ろうとも
わたしの身体は風に乗らない


「恐竜は鳥になってしまった」

恐竜は鳥になってしまった
大空を羽ばたくかわりに
偉大さをなくした

朝 にわとりが声をあげる
恐竜の飛べない子孫が
景気よく声をあげる

より大きなものを知るためには
偉大であってはいけない
一番であってはならない

にわとりに餌を投げながら
にわとりが得たものについて考える
にわとりが失ったものについて考える

恐竜の足跡が
庭に記されてゆく

あれは
ジュラ紀だったか
シルル紀だったか

思い出せないはずはない
わたしにも血は流れているのだ


「鳥のように」

要らないものを置いてゆこう
たくさんの脂肪は要らない
骨密度の高い骨も要らない
必要最小限の骨と肉と脂肪を持って

必要なのは翼
翼を動かす筋肉
方向を知る目とその他の感覚
そして飛び立とうとする意志

それでもまだ置いてゆかなくちゃならない
重すぎる頭蓋骨
そのどうでもいい中身

人間である限り私は飛べない
人間であることを捨てて私は飛ぶ
鳥のように


「空と引き換えに」

鳥よ鳥たちよ
空を飛ぶことと引き換えに
力を諦め
知力を諦め

ただ空飛ぶための
筋力と
かるいかるい骨と
すてきにかるい翼と

鳥よ鳥たちよ
おまえたちが空飛ぶために
空と引き換えに

なくしたものをこの身に抱えて
飛べない私は
おまえたちが飛ぶ空を見る

8/21/2024, 10:54:09 AM