圧倒的にペンギン

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【行かないで】

今日は商談のため後輩と一緒に取引先のA社に来た。
名刺の交換も無事終わり一息着いたところでコーヒーが出てきた。
後輩はコーヒーにミルクを入れて飲んでいたが、しばらくして顔をこわばらせ、机をひっくり返した。

後輩「コーヒーは普通ブラックだろうがァァァーーーーー」

まずい。始まった。
後輩は相手の粗を見つけては徹底的に攻撃するクレーマー営業なのだ。
しかし取引先も負けていなかった。

A社部長「君たち不敬だぞ。ここは私の城だ」
そう言うとスタンガンを持った手下が周りを囲んだ。

まずい。相手を誤った。
A社部長は取引相手をリンチすることに快感を覚える変態だったのだ。

ここまでか。後輩も顔が青くなっている。
私も諦めかけていたその時、後輩はあることを思い出した。

─手土産をまだ渡していない

後輩「先輩!例の物を渡しましょう。それで解決です」

そうだった。手土産にA社部長の大好物であるカブトムシの唐揚げを持ってきていたのだ。

「これをお納め下さい」

私は素早く土下座して手土産を差し出した。

A社部長「いい心がけだ、ん?」

しかし部長が箱を開けると中は空っぽだった。
まずい。つまみ食いしてたのを忘れてた。

─私が振り向くと後輩は既に逃げていた。

10/24/2023, 7:53:03 PM