Y隊員

Open App

「もしも未来を見れるなら」

また、いじけてるのか

彼は一言もらす。
膝を抱えて河川敷の草の上でいじけている少年の側に
そっと立つ。
少年からは姿は見えない。

少年は傷み始めた本を握りしめている。
「僕はどうしてうまく出来ないんだろう?」
何度も読んだ本は大事にしている。
"宇宙のランデブー"

「今度、失敗したら、僕、もう、宇宙に行けない。
パパの言う通りに軍に入らないといけないんだ。
軍は怖いよ」
グスン 鼻をすする。

宇宙飛行士養成学校に受験できるのは三度まで。
次が最後だ。

「僕、どうなるんだろう」

少年は本に額をおしあてた。

彼は懐かしそうにその姿を見た。

軍が怖いくせに宇宙は怖くないとは度胸があるのか
ないのか、不思議だ。

僕は不思議な声を聞いた。

"見たら驚くぞ"

僕は見たいと思う。

「未来がみれたらなぁ」

その声に彼は苦笑する。
我ながらかわいいものだ。



次の試験、僕はあと少しで合格だった。

パパの言う通り、軍に入った。
軍に入ってから、宇宙軍を作る為の人材募集があった。
応募した。
通った。

訓練した。訓練した。

ある日、僕は鏡を見た、
あの日、河川敷でいじけていた僕はいなかった。

「見たら驚くぞ」

そう言ってからあの声を思い出す。
あれは僕の声だ。

もしも未来が見えたなら
僕は努力をしなかった。









4/19/2026, 2:24:05 PM