『君と最後に会った日』
「お〜い。小夜〜?」
隣を歩いている小夜へ声をかける。だが、反応は無い。よく見ると小夜はイヤホンを付けていた。多分音楽を聴いているんだろう。
「流石に無視は酷く無いか〜? 俺達結構仲良かっただろ〜?」
やはり、反応は無い。小夜は俺の事が眼中に無いように、前を向いて歩いている。前は結構優しかったんだけどな〜。まあ、今みたいに冷たい時もあったけど。
多分、学校へ向かっているんだろう。俺はそんな小夜へ付いていく。そのまま突き当たりを左へと曲がり、更に坂を登る。……これは、学校への道じゃ無い。
着いた先は、ある神社だった。小夜はイヤホンを付けながら賽銭箱へお金を入れ、ニ礼ニ拍。
「おいおい、まさかだがあんなでまかせを信じてるのか? ある音楽を聴きながらこの神社でお参りすると願いが叶うって言う——」
「私は、信じてるから」
俺の言葉を遮り、小夜は呟く。それは独り言じゃ無いようで、独り言であった。
「貴方が帰ってくるなんて思ってない。でも——こんな風に何かに縋ってなきゃ、壊れちゃいそうだから……」
……ああ、泣かないでくれ。俺はお前のそんな顔を見たくて助けたんじゃ無い。お前には笑っていて欲しいんだ。
「あの日、貴方と最後に会った日にね。私、告白するつもりだったんだよ……? ずっと一緒に居てくれた貴方に、これからも隣で居てくださいって」
「……小夜」
「今、居るんでしょ? 位置とかはわからないけど、何故か、わかるの。だから、今言うね。これで、もう終わり」
そして小夜は、世界一悲し気で、そして笑顔で、その愛した人に終わりを告げるように、言った。
「愛してるよ、煌驥。ずっと、ずっと幼馴染の貴方が、好きでした!」
俺もだよ、小夜。お前と最期に会った日に、告白しようとしていたんだ。でも、お前が終わらせるなら、俺もケリを付けるとしよう。
「俺もだよ、小夜……ずっと、ずっと愛してる」
6/26/2024, 10:52:01 AM