波音に耳を澄まして
朝の海を知っているだろうか?
小学生の頃、夏休みに祖母の家に泊まり、朝早く犬の散歩のために近くの海岸へ行った。
朝の海はものすごく静かで波音が立体感をもって耳に迫ってくる。
はっきり言って怖い。
折角の散歩なので、犬に海を見せたいこともあって波打ち際まで近づいた。
近づけば近づくほど、波音から物凄い地球のエネルギーを感じる。
海に飲み込まれてしまいそうで、体の底から震えだしてしまいそうなほどだった。
こんなに絶え間なく波音が迫ってくるのに、犬は知らん顔で波に近づいていく。
おい、波にさらわれたらどうする?
私は泳げるけど、泳いで助けに行くほどの勇気はないよ?
「_ねぇ、こっちにおいで」
リードをひいた。
犬は構わずに波打ち際を平行に歩いていく。
私は引っ張られるように歩いた。
なんでそんなに怖くないの?
海の奥まで行ったら、帰ってこれるか分からない。
海はずっとずっと向こうまでつながっている。
想像できないほど、大きい。
波音に耳を澄ませば、その途方もない大きなエネルギーを感じて震え出す。
7/5/2025, 2:29:23 PM