風に乗って
風に乗って世界を旅したい。
そう思ったことがある。何に生まれ変わりたいかと聞かれたときに浮かんだことだ。小さな分子にでもなって世界中を巡りたいと思った。
さて、仮にそれが実現してしまったとしたらどうしよう。私は台風のような突風はもちろん、指一本動かして発生するような微風にも流されて、宙を漂ってだだっ広い世界を旅することになる。
それは果たして旅と呼べるだろうか? 世界遺産をゆっくり見る時間も、各国のグルメを味わうことも、文化の違いを楽しむ余裕もない。偏西風にでも巻き込まれてしまったら、そこから抜け出す術はないかもしれない。
しかし、何もせずただ風に乗って様々な場所を巡れるというのは魅力的な発想だ。そうだな、小さな分子ではなくて、もう少し大きなものならどうだろう。
以前水族館でマンタを見たとき、空を飛んでいるようだと思った。空を飛ぶマンタに生まれ変わるのはどうだ? 羽衣のように空を舞い、風に乗って世界を巡る。人に見つかっては面倒だから、透明だとなお良いな。なかなか優雅で美しいじゃないか。小さな分子でいるよりは少しゆっくりと観光する余裕もできるかもしれない。
悪くない。何に生まれ変わりたいかと聞かれたら、今後は空飛ぶマンタと答えようか。
4/29/2024, 12:45:32 PM