千春

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 いつもと何も変わらない、深夜1時を回った頃。きみは仕事から帰ってきて、寝る支度をする。
 きみは、ぼくはもう寝ていると思っているから、「ただいま」のひと言も言ってくれない。けれど、それはきみなりの優しさなんだろう。
 シャワーの音、ドアが開く音、ドライヤーの音、足音。
 ちょっとずつ近づくきみの生活音を聴いていると、いつもぼくは気づけば深い深い眠りについてしまう。
 きみは朝も早いから、結局ぼくらが目を合わせられるのは偶然会ったものの数秒とか、そこらだ。
 それでも、きみがいつも寝る支度を終えて布団に入ったら、寝ているぼくに「おやすみ」を言ってくれていることを、ぼくは知っている。その言葉でぼくはいつも目が覚めるけれど、返事をしたらきみは照れて言わなくなってしまうだろうから、きみだけの秘密にしているよ。


日常

6/22/2023, 5:21:09 PM