「ジンゴさー、今年の冬休みどうする? みんなでどっか行かね?」
「ウケるまだ8月じゃん。気ぃ早すぎじゃね?」
「だってさー、お前の家キビしいじゃん? 結局去年も一昨年も遊べなかったしさ。今年で高校も最後だし。色々思い出作っときたいじゃん」
そう言って栄《エイ》は俺の目を見て笑う。
クーラーの効いた教室の中。
それぞれがそれぞれの会話に夢中になる昼休み。
その温度が、音が、少しだけ遠くなる。
「そだなー。考えとくわ」
そう返した俺は、うまく笑えていただろうか。
……もし。もし、ここで全て話せば、俺の未来は変わるだろうか。なんて、一瞬浮かんだ熱はすぐにクーラーに冷やされ常温にかえる。
言えるわけない。言ってどうする。第一、栄は一般人だ。信じてもらえるかもわからない。そんなことを話して栄にどんな重荷を背負わせる気だ。
俺は未来が視える、とか。
秋には俺は死んでいる、なんて。
出演:「サトルクエスチョン」より 福井 栄(フクイ エイ)、仁吾 未来(ジンゴ ミライ)
20241114.NO.103「冬になったら」「たくさんの思い出」
11/18/2024, 11:35:16 AM