ロイチ

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   一年後

「くっそ、ぜってぇ来年同じ大学合格してやるから待ってろよ」
「頑張って、待ってるから!」

 死ぬ気で頑張った。夏には余裕の判定貰っても、ランク上の大学を勧められても、脇見もせず遊びもせず、頑張った。
 だから、今ここに立ってることに感動とかは無くて。
 今何の言葉も出てこないのは、俯いてるのは、逃げ出したいのは、

「お、おめでとう。キャンパスライフ、楽しんで」

 会いたいって連絡に、お昼休みに学食でって返ってきた違和感とか。
 地元には無いブランドの服とか、綺麗な靴とか、雑誌でよく見るような髪型とか。
 どうしようって隠せてない困惑とか。
 右手に見えてる指輪とか。
 そういうのでも無くて。

「やっと大学生だわ〜。今まで散々我慢した分遊び倒してやるー!」
「え〜、留年しないようにね」
「分かってるって。マジメに授業出て、テキトーにサボって、サークルもバイトもこなして……ちゃんと大学生するよ、オレも」
「……そっか。じゃあ、そろそろ行くね」
「おう、ありがとな」

 理想の一年後を、勝手に描いて勝手に裏切られた気分になってる自分が、ひどく惨めで情けないからで。
「たったの一年じゃんよ……」
 たかが、されど。言われなくたって分かってる。

 何となく、一年後も情けない姿で一人でいる自分の姿が見えた気がした。
 

5/8/2023, 11:13:13 AM