『宝物』
「それずっと持ってるよな」
僕が使っている少し黄ばんでしまっている栞を指差しながら、新しいの買わねえのと疑問を口にする。確かにもう、10年くらいは使っているし、花は黄ばんで見栄えはあまりよろしくはないし、替え時というのもごもっともな意見だけど。
「替えない、これがいいの」
だって、これは貴方がくれた宝物だから。
「大切に使っていただいて光栄だな」
「……は?」
そう言って呆気に取られている僕を置いて、風呂に入ってくると言い行ってしまった。
ずっと前にくれた物だし、貴方がその時に言った台詞がいらないからあげるだったから、忘れてしまっていると思っていた。だけれど覚えていたとしり、顔に熱が溜まるのを感じながら、ミモザの花の栞を見た。
11/20/2024, 10:49:54 AM