暇つぶしに立ち寄った古本屋で懐かしい本を見つけた。学生時代に買って何回か読んだ割と好きな小説だ。とはいえ一人暮らしを始める時に荷物になるからと売ってしまった。以前にふと読みたいなと思って売った店に一応見に行ったものの、当然売れてしまっていた。さらにマイナー寄りだったのかネットで買おうにもなかなかの値段がしたためまあいいやと忘れてしまった。そんな本が今私の目の前にある。私は迷わず手に取りレジに向かった。
帰宅した私はコーヒーを用意して鞄から本を取り出した。表紙をめくり、最初の数ページを読むと、少しずつ記憶がよみがえってきた。「そうそう、こんな話だったよな。」と思いながら読み進めていくとふと引っかかる部分があった。何故か数ページだけ変色しているのだ。記憶をたどっていくと一つ思い当たることがあった。あの時、お供にしていたコーヒーをこぼしてしまったのだったな、と。そしてページが破れていないということは当時の私は相当丁寧に扱ったのだろう、とも。そこまで考えてはたと思った。「となるとこの本はあの時私が売ったあの本なのでは。」と。あれからどれくらいの年月が経ったのだろう。それだけの時を経て、様々な人の手に渡り、今こうして再び私の手元にある。このめぐり逢いは間違いなく奇跡だ。ならば今度は手放さないようにしよう。この偶然を大事にしたいから。
9/21/2024, 2:23:56 AM