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※BLです。苦手な方は飛ばしてください。












 好きだと言ってきたのはあいつから。
「俺、先輩のことが好きです!」
 真っ赤な顔で、真っ直ぐ俺を瞳に映して叫ぶように告げられた。いつもだったら面倒くさいと思うことなのに、素直に嬉しいと思った。だけど、誰かと付き合うとかは、正直考えたこともなかった。
「あー、えっと……」
 どう返すのが正解か。いつもなら「ごめん」の一言で済んできた。でも相手は部活の後輩で大切な相棒だ。
 俺の返事ひとつで部活に支障が出たら困る。そしてなにより、ここで断りたくないと思ってしまった。
「いえ、返事は結構です!」
 俺の顔の前に手を突き出して、伝えたかっただけだと言う。
「そう、なの?」
 普通、好きなら付き合いたいと思うんじゃねぇの?
 それとも、付き合いたいと思うほど好きじゃねぇってこと?
 首を傾げた俺の様子に気づかずに「じゃあ、そういうことなんで!」と背中を向けて駆け出していった。
 ぽつんとひとり取り残されて、振られたみたいに立ち尽くす。
「え、どういうこと?」
 じわじわと腹の底から笑いが込み上げてくる。言ったもん勝ちじゃねぇか。「好き」なんて衝撃的な言葉を告げておいて、返事も聞かずにあっさり去っていく。
 なんだよあいつ。ほんと面白ぇ奴。そんな奴、この先絶対に忘れらんねぇだろうが。

「先輩っていつから俺のこと好きなんですか?」
 そういえば、と風呂上がりにソファにくつろいでいると、隣に座って俺の肩に頭を持たれさせながら聞いてきた。
「なんだよ急に」
 さらさらの髪の毛が頬をくすぐってくる。さっき俺が念入りに乾かしてやったから、手触りも抜群だ。
「んー、なんとなく?」
 なんとなくって。まあ、お前らしいなと、さらさらの髪をかき混ぜる。
「で、いつなんすか?」
 好奇心旺盛な瞳がじっと俺を見つめ、早く早くとせっついてくる。
「あー、いつからだっけなあ」
 誤魔化すように肩からの視線を避けて、反対側を見る。いつから、なんて決まってる。お前が俺に一方的な告白をしてきた日。あの時からお前に恋をして、俺をもっと欲しがるように仕向けてきた。
 まあ、我慢出来ずにお前を欲しがったのは、俺の方だったけれど。
「えー、わかんないんすか? 初恋の日!」
「なにそれ」
 初恋の日ってなんだよ、と視線を戻せば、きょとんとした顔をしながら体を起こす。
「だって、先輩の初恋って俺でしょ?」
 そう自信満々に言われると、なんとなく否定したくなる。でも、初恋、と言われればそうなんだろう。こんなにも好きになったのも、心から欲しいと思ったのもこいつが初めてだ。
 俺が気持ちに気づいたのは、こいつが俺に告白してきた日で、初めて付き合ったのもキスもそれ以上も。全部の初めては、お前から貰ったってことになる。
 あの日が俺の初恋の日か。
「あー……」
 気がついて唐突に恥ずかしくなった。両手で顔を覆って俯けば、隣からくふくふと嬉しそうな笑い声が聞こえてくる。
「ちなみに俺の初恋の日はですね、」
 赤くなっているであろう俺の耳に、こそりと甘く声を流し込んでくる。ますます赤くなった俺をけらけら笑いながら楽しそうに見つめる瞳は、俺の大好きな色を輝かせていた。
 ああ、くそ!かっこ悪いなあ。
 だけど、それ以上に嬉しくて。恥ずかしさなんて放り投げて、隣で笑うかわいい恋人をぎゅうぎゅうに抱きしめた。

5/7/2023, 12:51:54 PM