(現パロ)
ぼーっと空を見上げていると、太陽が登る様が見えた。
そうか、もうそんな時間か。
オールしたことにそれで気づいてしまったのは愚かな話だ。もっと前から時計を見るチャンスなんて山ほどあったのに。
今日は特に予定はない。だからやけに冴えてしまったままの目を閉じるにたる気持ちがなく、なんとなく窓の外を見あげながら考え事をするなんてことをしてしまった。
「⋯⋯⋯⋯綺麗だ」
そんな声が漏れる。
「ユートピア」では見られなかったな、なんて思ったのは人生で何回目なのか。
僕が死んだ、なんて言い方は正しくないが、とりあえず転生したのだ。
ユートピアで過ごしていたある日、権力者がいなくなった。何故だかは知らない。僕はそれを知る術はどこにもなかった。ただ、消えたと意識してから少し経ったあとに、新しい『権力者』を名乗る人物が現れたからだいたいの察しはついた。
彼女がいなくなってからの世界は退屈だった。新しい『権力者』は前の権力者と違って、僕に対してどこか機械的な様子で接する。談笑をすることも、僕の演奏を聴きたがることもなかった。
だから僕は天界に戻って、どうか転生させてくれ、と頼んだ。死んだ彼女も共に、と。
僕は謀反者だから、彼女と同じところかは運でしかない、なんて言いながら神は転生させてくれた。そしてその世界で人生をちゃんと生きられたら、彼女と共に天使に戻してやる、とも。
ちゃんと生きてると言えるのか、この体たらくは。
人間は夜眠る生き物なのに、朝まで起きてしまっていては天使に戻れないかもしれない。
朝日が窓から差し込んできた。
暖かな朝日に当たって、身体が少しだけポカポカしてきて。
今日こそは権力者を見つけることができる、なんて気がした。
6/9/2024, 3:58:51 PM