「綺麗。」
一目見た瞬間、言葉が自然と溢れた。
「はぁ、やっと放課後だ。」
ため息が出る。放課後、誰も居ない教室、そんな中、私は留まっていた。理由は一つ。絵を描くためだ。普段騒いでいる分、放課後は絵に集中しようと決めている。
「今日のは、良い出来かも。」
一人で納得し、帰る準備をしている時、窓際の机にスケッチブックが置いてあるのが見えた。私は好奇心から、スケッチブックを開いた。
「綺麗。」
そこにはまるで写真から飛び出たように美しい風景化が描かれていた。綺麗。その一言だけが、この絵には相応しいと思えた。
「おい、勝手に見んなよ。」
絵に見惚れていると、一人の男子生徒が立っていた。
「この絵描いたの、君?」
「だったら何?陽キャ様には関係ない。」
彼はそう言って、スケッチブックを取り、素早く教室から出ていった。
家に帰り、次第に苛立ってきた。確かに勝手に見たのは悪かったけど、あんな風に言わなくてもいいじゃん。絵を描く事にカーストなんて関係ないし。
「でも、本当に綺麗だった。」
あぁ、余計にムカつく。
次の日の放課後。私は昨日の男子生徒を探した。さて、何処に居るんだ?そういえば、彼の絵、屋上からの景色だったような。ものは試しだ。行ってみよう。
「居た。」
「…何か用?」
「無愛想にも程があるでしょ。君の絵に用があるの。」
「意味分かんない。何のメリットがあるの?」
「絵を見るのに、メリットっている?…実は私も絵描くんだよね。でも、誰にも言えてない。昔、絵を描くのキモいって言われた事を引き摺ってんの。」
「いきなり何?」
「今度は、君が秘密を言う番。」
「強引すぎ。…色盲な事。絵を描くのに、障害でしかないよな。だから、いつも本当の景色は描けない。」
「そうだったんだ。ねぇ、これからは一緒に絵を描こうよ。私が君に、色を教えるよ。」
「何でそんな事…。俺に構っても意味ないよ。」
「だって、もう友達でしょ?秘密の共有したし。」
「変わってんな。…まぁ、良いよ。」
「決まりね。」
「俺に、世界の色を教えてくれよ。」
一緒に描こう。まだ見ぬ景色を。
1/13/2025, 2:08:01 PM