わをん

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『夢が醒める前に』 (夢をみる島)

いつからあるのかわからない島に私がいつからいたのかわからない。誰に教えられたわけでもないのに知っているお気に入りの歌を歌って過ごす変わらない毎日は、誰も来たことのなかった島にやってきた剣士によって少しずつ変わっていった。それまで知ることのなかった島の外の話は彼から初めて聞いたときから何度も思い出している。海の向こうに想いを馳せて、空を自由に飛ぶカモメに憧れるようになった。
島の一番高いところにあるタマゴからかすかに、けれど確かに歌が聞こえてくる。夢も悪夢も目覚めの時が訪れるとすべて忘れてしまうけれど、彼は私のことを覚えていてくれるだろうか。私の思い出や願いや想いはどこへいってしまうのだろうか。
いつものように空は青く雲は白く、風は穏やかに吹いている。もう少しだけ、彼と話がしたかった。

3/21/2024, 3:48:20 AM