お題『ページをめくる』
(一次創作『この夏、君と忘れない』夏菜子のターン)
引っ越しの荷物をまとめていると、高校2年生のときのノートが出てきた。
作業の手を止めて、恐る恐るページをめくり、すぐ閉じた。
……優斗と中村くん、そして山田先生の三角関係小説と、日記だった。
どちらもあまりに暗黒歴史すぎて扱いに困る。家に置いて行って家族に絶対見られたくないし、特に小説の方は引っ越し先で優斗に見つかったら確実に死んでしまう。
「夏菜子ー!」
一階からお母さんに呼ばれた。
「優斗くん、荷物運びに来てくれたわよー!」
いけない! とりあえずどこかに突っ込んでしまえ!!
絶対見つからないであろう下着の段ボールにそれを突っ込んで、「はーい!」と返事する。
あの頃は毎日がキラキラしていて楽しかった。
そして、今。
私と優斗は結婚しようとしている。
きっかけとなった、あの陸上競技場での1日を忘れることは一生ないだろう。
あの日は大変な1日だった——
9/2/2025, 10:57:27 AM