あなたは誰
薄暗い夕方
気温が下がる
肌寒く、しかし上着を着るほど寒くもない
日陰に入ると何処かしんとした空気が漂っている裏路地
どうもするも無くしゃがみ込む
人通りは無く、無機質な音ばかりが拡がっている
この世界から突然人が消えて一人になってしまったみたい
そんな事を思っても人は居なくならないし、誰かの生活は続く。
僕がこの世界から存在すらも消え去るか、この世界の住民が消え去ればいいのにと思う
17で始めた喫煙は26になっても続いている。
特に理由無く学校に行かなくなって気づいたらこんな年
家族からは見放され家から追い出された
追い出されてすぐは同じ年頃のグループと過ごしていたが
当たり前のように行われる犯罪とも言える行為に耐えきれず、逃亡。
その後はほそぼそとバイトで食いつないだ
それでも家は借りれないしスマホも持ってない
髪だって数年は自分で適当に切っている
それでも人間らしい生活は出来ていたはずだった。
ここ最近体調が悪く仕方なしに病院へ行った。
癌と言われた、ステージは3ギリギリ治療が間に合うか間に合わないかくらい。
両親には今更頼れないし、入院するほどよ金もない
それはほとんど余命宣告のようなもの
そのから今までのスズメの涙程しかない貯金を崩して生活をしていたが、とうとう金も尽きた。
まあ仕事もせず2週間よく持った方だろう
癌と宣告されて今までの張っていた糸が切れたのだろう
気力も何もかも無くなった。
ずっと廃人のようにネカフェの部屋で過ごした。
学校に行けなくなった時もそうだった、ある日プツンと糸が切れたように何も出来なくなってしまった。
当たり前が壊れて全ての針が狂う。
何を間違えたんだろう
ふと顔をあげるとモニターには人物が映っていた
髪もボサボサヒゲも生えてとてもまともな人間ではない
「あなたは誰なのですか?」
そう思ってもどうせ僕、
そこで自分の現実を見せつけられた、ふらふらとなけなしの金だけ払いネカフェを出る。
行く当てもなくふらふらとだんだん人通りが無くなって
裏路地へ最後の一本タバコを吸う
スマホは前酒を飲んだ日から見当たらない
清潔感のない自分がこんなとこにいたってただの不審者
ピエロにだってなりきれない
自分というどうしようもない人物を溶かして再構築したい
こんなのは自分じゃない、そう信じたかった
想像なんてしなかった自分を昔の僕は言うだろう
「あなたは誰?」ってね
2/19/2025, 6:16:47 PM