村人ABCが世界を救うまで

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ヴィルは手先が器用で、耳が良くて。よく村にくる動物や魔物の襲撃を事前に察知していた。
途中で出会った冒険者が「俺の職はまぁ盗賊みてえぇなもんだ」と言うものだから、なぜか影響されて盗賊なんて自らを名乗ったり…。
たぶんあの人はトレジャーハンターとか斥候とか罠掛け師とか、そういう類なんだと思うんだけどな。
「ヴィルも馬鹿な奴だ」
小さなゴブリンをいとも容易く打ち捨てて、刃が劣化するのを防ぐよう浄化の精霊を呼んでいる。正直ここまで色々と(人間的に)不器用なのに、地と水という最悪な相性の精霊を使いこなす森の民というのは聞いたことがない。
カノンの目には、嬉しそうに飛び回る精霊たちが最後に笑い合って空気に溶けていった。子供の高い声で耳につくけど、きっと自分たちも数年前はこんな感じだったんだろうな。

「残り香を使い、追いかけてくるように誘っているぞ。正気とは思えん」
「やめてくれよ…。そんな器用なやつじゃない」
小さな声で抗議する。
「なぜだ。お前たちは窮地に陥っても奴の肩を持つ。吐き気がするな。それが人間なのだとでもか言うつもりなのか」
「そういうのじゃなくて…」
カノンも両手に魔力を込め始める。二重三重になった障壁がずいぶん遠くまで飛ぶ。森のいくつかの地点でカチリと生命反応があった。

3/2/2026, 10:49:43 PM