生きているうちにやりたいことを思い付くだけ挙げてみようと、まっさらなノートを机に広げて考えてみる。
考えに考えて、五つくらいなら何とか挙げることができたが、それ以上となるとどうにも思い付かない。こんなに私の想像力は貧相だったか、はたまた好奇心とやらが薄いのか。
「なぁにやってんの?」
後ろから突然声を掛けられる。考えることに集中していたせいで、部屋に誰かが入って来たのにも気付けなかった。
「生きているうちにやりたいことリスト? ・・・・・・え、なに、これ?」
「ちょっと、勝手に見ないでよ!」
慌てた私はリストを覆い隠すように体を丸める。
「何でそんなもの書いてるの?」
「別にいいでしょ。単なる気まぐれよ」
「・・・・・・ふーん」
さっさと出て行ってほしい。私がそう思っていると、「生きているうちにしたい割りには、少なくない?」と、まさに悩んでいたことを指摘される。
「まだ書いてる途中だから」
「いや、さっき明らかに手、止まってたじゃん」
くっ、こいつはどこまでこちらの図星をついてくるのか。
「あっ、そうだ!」
私が悔しさに歯嚙みしている間に、持っていたペンを相手に取られた。こちらがすかさず抗議しようとしたところで、「これも付け加えといて」と、勝手に割り込みノートにサラサラと文字を綴っていく。
私はそれを読むと、一瞬だけ思考が停止する。
「何これ。全部あんたと何かをすることばっかじゃん!」
ノートを思わず鷲掴んだ私は文句を告げる。
「誰かと一緒にやったほうが、楽しいじゃん。それに──、そのほうがやりたいこともいっぱい浮かぶでしょ」
そう言われて私は、はたと気付く。
あんなに思い付かなかったやりたいことが、友人や家族の顔と一緒になって、一気に閃いた。
【やりたいこと】
6/11/2023, 6:30:31 AM