【愛があれば何でもできる?】
白い煙がメガネを曇らせる。
肺を満たす煙は、さらに身体を重くした。
助手席に座っているはずの彼女は、今は後ろに居る。
深く思考に耽っていれば、周囲の景色は徐々に暗くなる。
自分の手はハンドルを握りしめすぎていたのか、電灯すらない暗闇でも朱く見えた。
私は静かに後部座席のドアを開けた。
そこには愛する彼女が目を閉じて寝ている。
彼女の身体を抱き起こし、座席に座らせた。
そして手元のスマホで明るさを確保し、彼女を見る。
目元が濡れていることに気づき、起こさないように拭った。
既に息絶えている彼女の目は開かれることは無い。
私がこれからすることを彼女が見ることは無いのだ。
彼女の懺悔を聴いた時に、私は決断していただろう。
さて、日が昇る前にやらなければ。
愛する彼女を、誰にも見つからないところに。
車に乗り、ハンドルを握ろうとするが、手が震えてしまう。
後ろを振り返り、彼女を見た。
前を向いた時には、私は痛くなるほどにハンドルを握りしめていた。
5/16/2026, 11:39:49 PM