シロツメ ナナシ

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『記憶のランタン』


……ふぅ、
今日はひとつですか……
まぁ、そもそもつかないのが
当たり前ですから、仕方ありませんか……
むしろひとつ着いたことを
喜びましょうかね

……おや?あなたですか
いらっしゃい、星の図書館へ


       〜星の図書館〜

さぁどうぞ
あなたはカフェオレでしたね
お砂糖も置いときますから
お好きなだけどうぞ〜

私も、ちょっと甘めに
いただきますっと


―――ん?
なにをしてたのか?ですか

私がたまに
図書館の周りの海辺に欠片や記憶、
言葉を探すのはご存知でしたかね?

それと同じように時々
人の記憶の中を散歩しに行くこともあるんです
あーご心配なく
あくまで、お願いしに来た人だけです

そうですね、例えば……
あなたにも、ひとつやふたつ
思い出せない記憶ってあると思います
私はその記憶を
思い出すきっかけを灯しに行ってるんですよ
それもあくまで散歩のついでぐらいの感じです

よいしょっと
このランタンを使って散歩をしてるんです
星のランタン、
このランタンの火は色とりどりで
あらゆる色に変化してくれます
人の記憶というのは、小さな刺激で
思い出すきっかけになります
このランタンはそのきっかけ作りのひとつ
依頼された人、あるいは私のお節介で
人の触れられる範囲までの記憶に入り
ランタンを照らして、
記憶をほんの少しだけ
呼び覚ますきっかけを作ってます
しかしこれはあくまできっかけ
完全に呼び覚ますことはできませんし
きっかけに触れることも割と稀なんです

そうだ、
こちら私の持ってるランタンと
同じものをお渡ししておきましょうか

ええ、大丈夫です
夢の世界ですし
これはあなた自身にしか使えません
効果も少ないかもしれませんが
あなたの記憶を思い出させる
何らかのきっかけに繋げて下されば幸いです
お守りと思って、どうかお役立てください


さて、
今日は利用者さんも少ないので
私はもう少しだけ
記憶の散歩に行きますね
そのランタンは、星の栞の中に
持ち運べるよう閉じ込めておきますね
思い出した時に栞から取り出してください

それから、
「プラネタリウム」ルームは
私が戻ってからにはなりますが……
そうですね、あなたにもひとつ
「ユアルーム」をご案内しましょうか
この通路の先に扉があります
どの部屋から入っても
あなたの部屋に入れます
鍵はもちろん、あなたの星の栞、
簡単に言えば、
夢の世界のあなたの部屋です
ええ、いいんですよ
夢の世界ぐらい、あなたの都合よく
できてて欲しいじゃないですか
ただし、部屋やしおりの管理は
どうかご自身で責任をもって行ってください
さすがの私でも…
そこまで管理できませんので。
           ―――っふふ


ではでは、
どうぞご自由にゆっくり
ご活用くださいね

あーそうそう
星のランタンの火加減は
結構自由が効きますし
周りが燃えることもないですが
使いすぎだけはご用心
まれに意図せず、
記憶を蝕むことが聞かれてますので
たまに休みながら使ってくださいね

では、また―――


〜シロツメ ナナシ〜

11/19/2025, 6:25:06 AM