まにこ

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愛の反対は無関心、著名な誰かの言葉である。
その論理で言えば俺は確かに愛されているのだろうか。
「ワシが飯を食わせてやろうな」
「共に風呂に入ろうぞ」
「良い良い、厠の面倒もワシが見よう」
四肢は形としてはあるが、もう使い物にはならないので必然的にこの男の世話になる以外に生きる術は無い。
「……ろせ、」
「うん?」
「俺を……殺せ……っ」
溢れる涙を堪えきれない。こんな生き恥を晒してまで生きる価値を到底見い出せないのだ。
「何を言うておる、お主はこれからもワシと共に生きるのじゃよ末永くな」
男は特徴的な三白眼を柔らかく細め、まるで愛おしい者に触れるかのようにして優しく頭を撫でられる。
「お主はワシのものじゃ、誰にも渡さぬ」
愛しておるよ
呪いの言葉が俺の心を身体を蝕む。こんな形で生きても最早死んでいるのと同然だ。
それなのにどうして心の奥では凪いでいるのだろう。視界は滲んでぼやけているが、男の柔らかい笑みを見られるのが嬉しいなんて。
愛の反対は無関心。その言葉がじわりと滲む。

11/27/2024, 8:40:03 PM