「逆さま(創作)」
青い空が広がる春の暖かい日、私は玄関先で不貞腐れていた。
「本当に行かなくていいの?」
「行かない」
家族で動物園に行くことになっていたのだが、ちょっとしたことがきっかけで行く気になれず服にも着替えないで抵抗していた。
それに、自分を置いて行くはずがないと思っていた事も大きかったけど、この日は本当に私を置いて動物園に行ってしまった。
この日を境に私の心にモヤがかかり、思っていることと反対のことを言うようになった。
「全然可愛くない」
「やりたくないから勝手にやれば?」
「ウザイんですけど」
もう、自分の心と反対の言葉が、泉のように溢れ出す。自分でもどうすることも出来なかった。
次第に友達も離れていき、私はひとりぼっち。どこにも行く場所なんてなかった。
大きな殻に少しずつ少しずつ自分から入って行って、誰の声も聞こえない。自分の心の声が洞窟の中で響いている感覚が長い間続いた。
「いつまで、そうしているつもり?」
年の離れた高校2年の姉が、うずくまる私に向かって言った。
「小学6年から中2まで、不貞腐れて…なっがっ!」
「うるさっ」
「物事なんて見方次第で変わるんだよ」
あなたみたいに楽天的にはいかないのよ。出来たら今頃こんなひねくれた気持ちになっていない。
私はいつまでこのままなのだろう…
人生がつまらない。楽しくない。私には未来があるんだろうか。自分の殻の中に、不安というモヤが増えた気がした。
「勝手にしな。たださぁ、あんたの味方は近くにいること忘れないでよ」
私の肩をぽんと軽く叩いて、姉は出ていった。叩かれた肩がほんのり、あたたかい…気がする…。
「ふぅ…」
私の言っていることが逆さだとしたら、やっぱり心のどこかでは【変わりたい】と思っている自分もいるのだろうか…。
12/6/2024, 11:47:06 PM