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「ベルの音」


鳴り響く非常ベル。
でも、皆訓練か誤作動か悪戯だと思って、慌てる人はいない。
平和ボケしてるからなのか、現実を受け入れたくない気持がそうさせるのか。
理由はわからないけど、見事な位緊張感ない。

でも、これは訓練じゃない。
きっと、火が出てる事を、私は知ってる。

あの男は言った。
「お前が居ないと、俺はどうすればいいんだ?お前が居ないと、俺は生きて行けない。」

いつも、私に依存する男だった。
そのクセして、全てを私のせいにして、私が勝手に罪悪感を抱く様に仕向けてた。
こんな男に、いい様に操られてた、騙されてた自分が馬鹿らしいし、恥ずかしい。
やっと目が覚めて、その事に気づいた。

だから、縁をぶった切った。
そしたら、あのセリフ。
もう、心の底からどうでも良かった。
兎に角、目の前から消えて欲しかった。

「好きにすれば?もう私に関係ないし。」
あの男は、持っていたタバコを落として。
薄汚れたスニーカーの上に落ちて、うっすら煙が出てた。

それも無視して、その場を立ち去った。
呆然としてるあの男は、気づかないかもしれない。
火が、出るかもしれない。

未必の故意。
そして、その結果、鳴り響くベル。

周囲の喧騒がざわめきに変わり、やがて阿鼻叫喚に変わる。
他の人を巻き込みたい訳じゃなかった。
ただあの男に視界から消えて欲しかっただけなのに。

どこまでバカな、自分勝手な男なんだろう。
私は、どこまで愚かなんだろう。

あの男に植え付けられた罪悪感からは解放されたけど、今度は自分の行動が起こした事の罪で、身動き出来なくなった私がいる。

12/20/2024, 10:50:16 AM