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物憂げな空


曇りときどき雨。天気予報にはそう書いてあって、空を見上げれば、たしかに分厚い灰色の雲に覆われていた。
どんよりとしたそれはどこか物憂げで、なんとなくこちらの気分も下がってしまう。
「晴れるよ」
思わずため息をつけば、隣を歩く君はいつもと変わらぬ声色でそう言った。
その言葉に、もう一度空を見上げてみても晴れそうな様子はなく、むしろ雨が降りそうにしか見えなかった。
訝しげにそちらを見れば、君は西の空を指差した。その指の示す先を見ていると、雲の隙間から一本の光が降りそそぐ。その光の柱は徐々に増えていき、地上を照らす。
「ね、晴れたでしょ」
そう言って笑う君のもとにも光が降りそそぎ、その笑顔を照らしていた。

2/25/2023, 2:52:47 PM