明日は何をしようか。少年は子供部屋の中を意味もなく歩き回りながら思案する。
流行りのゲームの裏ボスを倒しに冒険してもいいし、こっそり図書室で借りてきた好きなあの子が読んでいた本を読んでみるのもいいかもしれない。一度開いて断念したけれど一日掛ければ自分にも読めるかも。
そうだ。朝は少し寝坊したって構わないから今夜は夜更ししてもいいかもしれない。何かしたいことがある訳ではないけれど、窓に肘をついて少しずつ灯りを失いながら静かになっていく街の空気を眺めるのも乙なものだ。
ああ、明日が待ち遠しくて仕方がない。寝て起きる時間も惜しいほど。
でも、万が一。いや億が一。もし明日晴れてしまったら。明日の予定も今膨らみ続けているこの期待も全て泡のように消えてしまう。
ああ神様。どうかそんなつまらない結末にはしないでください。少年はベッドの上で手を組んで仰々しく祈りを捧げた。
だが、神とは残酷なものである。
「台風は逸れたから明日も学校よ。さっさと寝なさい」
部屋のドアから顔だけ覗かせた母の言葉に、少年は静かにベッドに崩れ落ちた。
/明日、もし晴れたら
8/1/2023, 1:17:29 PM