夜汽杏奈

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「優しくしないで」

あの大きな石に触って
あの大きな石を撫でた
あの大きな石に願って
あの大きな石に手を合わせた
貴方の面影を見つめながら

待っていて

間違いだらけの世界に
透明な鉛筆でカレンダーにバツをつけた
ジャッジできるわけない
そういいながら
唯一希望の星空の下
ハンモックで夢を見る

光と融合したおとぎの国は
涙の雫を集めて
片っ端から水やりした
夢に見る砂漠に咲く一輪の薔薇
たった一人に会う夢は
叶えられる筈だった

でも一向に
貴方の姿が見えない
でも一向に
ファントムの仮面も薔薇もない
この世界の闇もオルガンの音も
まだ残っていた

遠い遠い遠い光の昔
「もうすぐ地球へ行く」
そういう貴方は私の額にキスをした
「優しくしないで」
もっと違う言葉を言えば良かった

何度も何度も輪廻転生
楽しかった筈のメリーゴーラウンドは錆び
それでも想いだけは忘れずにいた
会えない時がこんなにも
長くなるなんて知らずに

世界が緑と笑顔と安心で埋め尽くされても
大切な人がそばにいなくては
きっとそこは無機質な
冷たい石が敷き詰められた空間

涙の雫を集めて
片っ端から水やりした結果
美しいローズガーデンが完成
黒いマントを翻し
仮面を外しながら
歩いて来るのは私のヒーロー

大きな貴方が小さく手を振り
駆け寄る私を抱きしめる
貴方の唇と私の額が触れ
やっと逢えたねと微笑んだ
二人暖かな手を繋ぎ
永遠に離れない魔法をかけた
この世界の闇も
薔薇の花びらと共に散る




5/2/2023, 5:21:37 PM