モンシロチョウ
木々が生い茂る森の中を少女は一人さ迷い歩いていた。
舗装された道もあれば、獣道が続いていることもあり、歩きにくい森の中を少女はただひたすらに進んでいた。
ふと、目の前を何かが横切ったのが見えて、少女はそちらに目を向ける。そこにはひらひらと羽を羽ばたかせながら飛ぶ蝶々がいた。白くて小さいそれはモンシロチョウで、少女の目の前をゆらゆらと通りすぎ、そのまま飛んでいってしまう。
まるでモンシロチョウがついてきて、と呼んでいるように感じて、少女はその後を慌てて追いかけた。
さっきまで鬱蒼としていたように感じていた森の中も、何だか生き生きと楽しげで。太陽のあたたかい光が木々の隙間から降り注ぎ、周りが一段と明るくなった。
モンシロチョウを追いかける少女の目は輝いていて、希望に満ちあふれていた。白いうさぎを追いかけたアリスのように、行き着く先は不思議の国か、はたまたお花畑か。
そんなことは今の少女には知りえないし、当のモンシロチョウも知っているのか、それすら誰にもわからないのだが。
それでも、こうやって今日も新しい物語が始まるのだ。
5/10/2023, 2:16:35 PM