Ayumu

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いかないで。
そばにいて。

――出かかった声を、必死に飲み込む。
特別な関係を拒んだのはまぎれもない自分。資格なんてない。
お互いのために、親友のままでいたほうがいいんだから。
ねえ、なんで立ち止まったの。さらに振り向くなんて、何の準備もできていないよ。
「ひっどい顔」
触れられた頬が変に熱を持っている。意識しないようにしよう。
「ねえ、いい加減に認めたら?」
自分がわかりやすいのか、君が鋭いのか。
でもね、そんな顔しても、優しい声を出しても、だめ。
「なんのこと?」
熱の元をそっと外して、笑ってみせる。
あのときのような失敗は、二度としたくない。
大切な人は、二度と失いたくない。


お題:失われた響き

11/29/2025, 3:08:07 PM