「なに見てるの?」
白い空のようなモノに向かって、透かすようにして花を見ていた彼女がこちらに目を向けた。
「オダマキ。綺麗だね。」
静かな声でそう言う彼女は、無表情だった。
「どこで拾ったの?それ」
「降ってきたんだ。きっと僕の親からのプレゼント。」
そう言うと彼女は上に向かって花を投げた。
オダマキ。花言葉は確か、『愚か』だった気がする。君の親がプレゼントしそうな花だ。
投げられた花は、重力に従ってぽとりと落ちた。
私がその花を拾いあげると花は、はらりと消えた。
「あの花、花じゃなかったの?」
「花だったよ。触れていた僕が言うんだ。間違いない。」
「君以外に触れられると消えちゃうなんて。繊細な花ね。」
僕に向けた言葉だからだろうね。彼女はそう言うと、何処かへ歩いて行ってしまった。
6/25/2023, 2:01:38 PM