題:糸結び
占い師を始めて2ヶ月が経とうとしている。
どうして占い師を始めたかというと、ロゼッタの願いは高確率で星に届くからである。
そうして届いた願いは糸となり、ロゼッタの手元にくる。その糸は願い事によって違う。燃えるような赤、静かな青、柔らかな緑ーーなどなど。
そのほとんどの願い事の内容は『恋愛』である。
世の中の女性は男性に告白する勇気が無さすぎると、ロゼッタは毎日思う。好きなら好きと言えばいい。なのに運命の赤い糸を頼るなんて……。
ロゼッタは魔女であるため、不老不死。そのせいで男性に会う機会は無く、恋愛はとてつもなく疎い。
今日もロゼッタの元に一人の女性が来た。
今日も赤い糸を小指に結ばなければならないのか……と、ロゼッタが小さく溜め息を吐く。
しかし女性は、意外なことを口にした。
「安産祈願の糸はありませんか?」
「…………………………………え?」
しばしの沈黙の後、出たのはその言葉だけだった。
こんなことを言う人は始めてだ。どうして神社ではなくここに?
「どうして貴方は神社ではなくここに?」
その質問に、女性は少し困ったような顔で答えた。
「確かに安産祈願で有名な神社はあるけれど、ここの方が確実だと思って」
私のことはそんなに知られていないと思っていたが、案外知られていたのだ。
ロゼッタは正直驚いたが、引き受けることにした。
「……分かりました。少しの間、待っていてください」
ロゼッタは目を瞑り、祈る。
すると、ロゼッタの手が光りだし、その手の中に白色の糸が表れた。
その糸を女性に小指に結びつける。
「ありがとうございます」
女性は会釈をすると、走り去っていった。
その後、ロゼッタの元に来た女性がSNSに投稿した『【星祈り ほうき星】の糸結びのお陰で子供が無事に産まれました!』というのを見た人達が、ロゼッタの元に殺到したのは、また別のお話。
お題『糸』
6/18/2025, 12:07:20 PM