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お題:終わらせないで

 まず私は人間ではない。見た目は人間の女性体に近いが勇者を守るために生まれた存在だ。
勇者が記録大事と言われたから記録することにした。

 この世界は滅びへと向かっている。
どうやら勇者は世界へを救うために、犠牲にならなければならないらしい。
 勇者が死ぬを見届ける為の役割、世界のために犠牲になるまでは私が勇者を守らなければならない。
 しかし、勇者は自分が世界の犠牲にならなければならないことを知らない。
勇者の仲間たちも同様だ。
私だけがこの秘密を知っている。 
『最果ての地にある塔に勇者が祈れば世界は救われる』という人間界に伝わる伝説を彼らは信じてる。

 だが実際は勇者がその場で魂を捧げることでこの世界は、延命するだけだということを私はこの世界に生み落とされた時に知った。
 先代たちはこの残酷な事を全うできたのだろうか?
私は勇者達と旅をすればするほど先代たちへの疑問が深まった。

 勇者達と旅をするのは、楽しかった。
塔へ向かうまでには、苦難もたくさんあった。

 彼らと過ごす日々は生まれたばかりの私には不思議なことばかりだった。
でも彼らといると私は彼らと同じ人になれたような気がして本当に楽しい時間だった。
 初めてご飯を食べた時は、食べ物味に驚き、仲間たちと美しい景色を見た時は、自然の壮大さと美しさに圧倒はれた。
魔物に襲われた時も勇者とは背中を預けて戦った
ずっとこんな旅を続けたかった。

 最果ての地へと辿り着いた。
仲間たちはこれで世界が救われると喜んでいる。
明日、塔へ登りその頂上で魂を捧げれば世界は救われる。
 私は勇者を守り守れながらここまできた。
勇者の人生を終わらせれるのだろうか。





















「旅で途中何か書いてると思ったけどこんな事書いてたのか」
と一人の青年が女の手帳を見ながら呟いた。
「彼女、夜になるとその日にあった出来事たくさん書いてましたからね」
魔法使いのオネェが懐かしそうに語った
「人外の筈なのに、かなり人間臭いやつだったからな」
他の仲間たちも女の話に思い出を偲んでいた。
「全くこの勇者が格好良く世界を救うつもりだったのに出番を全部持ってかれたよ」

 あの日、勇者は確かに塔へついた。
そして祈り魂捧げた。
勇者も旅をする中で塔で祈れば自分がどうなるかは、予想を立てていた。
 それでも世界を救うつもりだったのだ。
仲間たちも勇者の意思を尊重することを選んだ。
そして勇者は塔で死んだはずだった。

 一つだけ勇者は誤算をしていた。
それは女の存在だった。
女は勇者を守るために生まれた存在だった。
勇者が勇者と呼ばれたのは女が勇者の魂の欠片から生まれた存在だったのだ。
 あの時勇者は塔へ魂を捧げた。
しかし勇者の魂そのものではなく、勇者の魂を持った女が勇者の代わりになったのだ。
 勇者は忘れない、大切な仲間の女が消えていく瞬間を困惑と怒りいつまでも忘れないだろう。
 女も大切な仲間だったのだ、だからこの世界で生きて欲しかったのに彼女は置いて行ったしまった。
女は消えゆく瞬間に、勇者に言った
「あなたの人生をここで終わらせないで」
と、だからこそ勇者は今日も生きる。
死んだ時に土産話をたくさん持っていってやろうと決意した。



その様子を遠くで見た女が満足そうに笑った気がした。

11/28/2023, 3:34:25 PM