お題:静寂に包まれた部屋
がらんとした和室の中を見渡した。
もう誰もいない、時の止まった場所。
どこまでも静かで、かつてここで暮らした人たちがいたことが嘘のようにひんやりとしている。住む人がいなくなると家は息吹を止めた死体のように、瞬く間に朽ちていく気がしてならない。
それでも、往時を思わせる家具や調度品が、辛うじて人の残り香のようなものを感じさせてくれた。
仏壇から視線を上に向け、ずらりと並んだ写真をぼんやりと眺めた。
もう今はいない祖父母や曾祖父母、ご先祖様の遺影たち。会ったことのある人も無い人も、オールスターが勢揃いだ。
私が知るのは祖父母や曾祖母だった。曾祖父は私の生まれたばかりの頃に逝去しており、顔を合わせたこともあるのかもしれないけれど、生憎こちらに記憶も思い出も無い。
誰もいなくなったぼろぼろのこの家で、仏壇の前で手を合わせる時が、一番心の奥深くまでもぐって、自分自身と対話できる時間のような気がする。そして、亡くなったご先祖様や身近な家族だった人たちとも。
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執筆時間:20分間くらい
電車の移動中の暇つぶしにささっと書きました。
9/29/2024, 10:21:00 AM