語り部シルヴァ

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力を込めて

夕陽が差し込む屋上は、
少し離れたところで吹奏楽部の音色が静かに響く。
いつも気になってる先生に忘れ物をしたと嘘をついては
こうして屋上で吹奏楽部の演奏を聴くのが最近の楽しみ。
普段から話しかけてるおかげか、
先生も私の嘘を嘘と知って鍵を貸してくれる。

空気が乾燥してると音が響きやすくなるから
空にいっぱい音が広がる。
心地よい...
そう目を瞑りながら聞いていると
入ってきた屋上に扉が開く音がした。

焦って振り向くと鍵を貸してくれる先生がいた。

「えっと...先生、どうしました...?」
「いえ、あなたがいつも屋上に行く理由がふと気になって...
来てみました。」

...ドキドキする。寒くなってきたせいかな。
顔も赤くなってきた。

「なるほど、吹奏楽の演奏を聴いてたんですね。」
屋上の転落防止の柵に身を預けて
目を閉じて演奏を聴く姿は絵になる。

こんなタイミングで先生が来るなんて思わなかった。
もう...伝えてもいいかな。
結果は分かりきってるけど、伝えないと後悔する。

「あの...!!」
少し裏返ったが先生はからかわずに
なんでしょうと聞いてきた。

私はお腹に思い切り力を込めて気持ちを伝えた。
吹奏楽の音はピタッと止まったせいで私の声は
学校中に響いただろう。

語り部シルヴァ

10/7/2024, 11:16:00 AM