もう二度と
「なあ、もう一回やろうぜ!」
僕がそう言うと、アイツは苦笑いして首を振った。
「バカ、何回やっても俺の勝ちだろ?」
いつもの公園、いつもの1on1。僕は一度も勝てなかったけど、それでも諦めずに挑み続けた。
「よし、ラスト1本な」
そう言って、アイツは笑いながらボールを奪い、軽やかにシュートを決めた。
「はい、俺の勝ち」
「くそ……また明日な!」
「おう、また明日」
アイツは笑って手を振り、自転車に乗って帰っていった。
——それが、最後だった。
その夜、アイツは事故に遭った。トラックとの衝突。即死だったらしい。
次の日も、僕は公園に行った。バスケットボールを抱えたまま、ただじっと立ち尽くしていた。
「なあ、もう一回やろうぜ……」
誰もいないコートに向かって呟く。でも、返事はない。
シュートを打つ。ボールはリングに弾かれて、コロコロと転がる。
「……また負けたよ」
風が吹く。桜の花びらがひらひらと舞った。まるで、アイツが笑っているみたいだった。
3/24/2025, 10:37:23 AM