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自転車に乗って、風を切って、無心に進む。夕方の疲れきった身体で坂を登り、下り、ただただ進んでいく。誰と話すことも無く、唯一人とすれ違う時くらいは気を付けながら。カゴに入れた鞄から下げられたキーホルダーが揺れ、ぶつかり、カタカタと音を鳴らす。やけに静かで寂しくて、虚しい。
いつも一緒に帰っていた君はいない。自転車を降りてゆっくり歩いて帰った日が遠い昔のように感じる。もう君と帰ることはない。遥か遠くに聞こえるはずの子供の声が、鳥の声がやけにうるさく感じた。短い音が響き自転車が止まる。真っ赤に光る信号が恨めしい。

君を忘れるのも、思い出すのも、何をするにもまず、自転車に乗ってから。



[自転車に乗って]

8/14/2022, 3:54:55 PM